米メディア早くも「大谷翔平は今季もエイリアン級」「2年連続MVP最有力」ともてはやす謎
暮れからこの年始にかけて、まるで宇宙人か何かのように報じられているのが大谷翔平(27=エンゼルス)だ。
米データ会社の創始者で、メジャーの投手にデータを提供しているマイケル・フィッシャー氏と、投球分析家のロブ・フリードマン氏は、ユーチューブチャンネルの対談で大谷について「絶好調時はどんな攻略法も意味がない」「エイリアン並みの運動能力」などと発言しているのだ。
野球専門のデータサイト「ファングラフス」は今季の大谷の成績を、投手として11勝8敗、防御率3.69、打者として38本塁打、96打点としたうえで、2年連続MVPの最有力候補と報じている。
1970年代にセイバーメトリクスを提唱、メジャーのデータ野球の礎をつくったビル・ジェームズ氏による「ザ・ビル・ジェームズ・ハンドブック」2022年版は、今季の大谷を「40本塁打、94打点」と予想した。
大谷は昨季、投げて9勝、打って46本塁打でア・リーグMVPを獲得。かのベーブ・ルース以来の本格的な二刀流選手として卓越した実績を残したのは間違いない。
しかし、2年続けて同様、いや、それ以上の成績を残せるのか。どんな攻略法も意味をなさないエイリアンか、となると話は違ってくるのではないか。
「昨季は大谷にとって特別なシーズンだった。一昨年まではメジャーでは並の選手。特に前半戦は投手としても打者としても、相手にさほどマークされていなかった。加えて本人も言っているように、もし、結果を出せなければ投打のどちらかを剥奪されかねない危機にあった。何が何でも結果を出さなければならない、精神的に追い込まれた状況で、なおかつマークもさほど厳しくない中で残した数字です。今年も同様の成績を残せる保証はないように思う」と、スポーツライターの友成那智氏がこう続ける。
同地区の戦力アップと故障不安
「昨季、ケガで離脱していた主砲のトラウトとレンドンが復帰して大谷へのマークが分散されること。ナ・リーグにDH制が導入される可能性があって代打でしか出場できなかった敵地の交流戦にフル出場できそうなことはプラス材料ですが、エンゼルスの西地区は各球団の補強によって全体のレベルが上がった。マリナーズが昨季のサイ・ヤング賞左腕のレイ、レンジャーズが昨季45本塁打のセミエンを補強。手術明けのバーランダーもアストロズと再契約した。対戦の多い同地区に限れば、昨年の打率は2割2分2厘に過ぎない。ただでさえ研究されている同地区の戦力がさらにアップしたマイナスは大きいと思いますね。昨年、後半戦で失速したことを考えると、今季は35本塁打くらいではないか」
友成氏によれば「何より心配なのは故障」だという。
「負担の大きな二刀流は、それだけ危険も伴う。投手は昨季以上に内角を厳しく攻めてくるでしょうし、左打者のため利き腕の右腕にぶつけられる可能性もある。大きな肘アテをしていますが、指先にでも当てられれば投手としてはそれこそ命取りですからね。走塁にしても危ない。俊足で内野安打も稼げますが、あれだけ全力で一塁を駆け抜けて足首を痛めない方が不思議。本塁へのスライディングをいとわない点も見ていてヒヤヒヤします。エンゼルスは先発もリリーフも脆弱なため、大谷には投手として昨年以上の負担がかかると思う。マドン監督は7回100球は投げてもらいたいでしょうし、降板後に1イニングだけ守備に就くようなケースも増えると思う。守備の負担を考えれば、いよいよ故障しないか心配です」
■チャレンジ精神を応援する気質
故障はもちろん、不安点はゴロゴロしているのに、米メディアは「2年連続MVP」「エイリアン」ともてはやす。米国の大谷フィーバーは今年も収まる気配がない。そんな米国人気質について、野球文化学会会長で、名城大准教授の鈴村裕輔氏はかつてこうコメントしている。
「米国には大谷が受け入れられる土壌があります。つまりフロンティア精神です。彼ら自身、合衆国を新興国家だと認識していますし、新たなことにチャレンジする人の背中を押す、応援する気質がある。投打に秀でた選手がいない中、日本からやってきた大谷が投手と野手を兼任、しかもどちらも優れた成績を残しています。いわばパイオニア、開拓者だからこそ大きな支持を得ていると思いますね」
メジャーは労使交渉がもつれて現在、ロックアウトの真っ最中。ただでさえ話題が不足しているとはいえ、大谷がオフの間も大人気なのはそれなりの理由がありそうだ。