師匠を交代してから稽古場に下りた回数は片手で数えられるくらい
10月2日、蒼国来の断髪式(写真)が国技館で行われました。来ていただいた、たくさんのお客さまには感謝しかありません。私も止めばさみを入れる時はこれまでのさまざまな思い出が頭をよぎり、ジーンとしてしまいました。
力士としての花道を歩んだ蒼国来は今後、師匠として長い道のりが待っています。引き続き、荒汐親方となった元幕内蒼国来、そして荒汐部屋の応援をしていただけたら、これに勝るものはありません。コロナ禍で引退相撲こそ延び延びになりましたが、私が相撲協会を退職した2020年の3月から、蒼国来はすでに「荒汐親方」として弟子を指導しています。
では、彼の指導がどんなものかというと……実はじっくりと稽古を見ていないんですよ。というのも、蒼国来が正式に師匠となってからは、私は極力稽古場には行かないようにしているからです。
■師匠と弟子の関係
理由はあります。荒汐部屋の力士たちにとって、師匠となった蒼国来は昨日まで同じ現役力士として、稽古をしていた「兄弟弟子」です。そうなると、なかなか師匠として接するのは難しい。中には変わらずに気軽に話しかけている力士もいました。そんなところに先代師匠の私が顔を出せば、ますますこれまでと同じ関係のままとなりかねない。