大谷「メジャー初の投打規定到達」は“つくられた数字” 専門家からの異論と本当の価値
実際にやるかやらないか
冒頭のアナリストが指摘するように、打撃の優れた投手がいようと、専業制の徹底したメジャーで二刀流が許されない状況にあったのは間違いないが、「重要なのは実際にやるかやらないか。この差は果てしなく大きい。大谷が評価されるべきは、そんなメジャーの現状に風穴をあけたことだと思いますね」と、米紙コラムニストのビリー・デービス氏はこう続ける。
「大谷がポスティングシステムでメジャー挑戦したとき、30球団ほぼ全部が獲得に名乗りを上げていますが、実際に面談までこぎつけたのは7球団といわれる。大谷は最初からメジャーでも二刀流を貫くつもりで、それが許されるであろう環境にある球団に絞って面談をしたのです。面談に臨めなかったヤンキースのキャッシュマンGMが“我々のプレゼンは完璧だったが、ニューヨークが大都市であることは変えようがない”と捨てゼリフを吐いたように、ファンやメディアのうるさい大都市圏の球団は最初から敬遠した。すぐに結果が出なくても、辛抱強く二刀流にチャレンジできる環境を選んだ。つまり大谷には、メジャーでもだれもやったことのない二刀流に挑戦する強い意志があって、なおかつ実際にチャレンジした。すでにローテーション入りしている打撃の良い投手が打者もやりたいというならまだしも、メジャーでなんの実績もない選手がいきなり両方やらせろというのはとても勇気がいる、というか、並の神経の持ち主じゃありません(苦笑)」
■「深くかかわるのはやめよう」
そういえば大谷は、日本にいたときから、そんなところがあった。ドラフト前は高校(花巻東)からいきなりメジャーに挑戦しようとしたし、日本ハムに入ってからも当たり前のように二刀流にチャレンジした。
大谷獲得時の日本ハムGMで現スカウト顧問の山田正雄氏は、日刊ゲンダイのインタビューに答えてこう言っている。
「『やってみなければ分からないですけど、周りにピッチャー専門の人がいれば、野手専門の人もいるのに、そんなこと僕が最初からやっていいんですか?』とか、そういうことを言うじゃないですか、フツーは。けれども、何も言わなかったですね。そのとき、僕はもう、あまり深くかかわるのはやめようと思ったくらいです(笑)」
「キャンプから二刀流をやっていたわけですからね。もし、悩みがあったりすれば、そのときは言ってくるだろうと思っていましたが、まったく言ってこない。ですから結構、楽しくやっているのかなと。その辺、神経というか考え方は一般的な高卒選手じゃないですよね。よっぽど自信があったのか……。だけど、自信を持つほど高校時代には活躍していませんからね。(中略)だから、いまだに、ああいうスタンスは何なのだろうと……」
今季は投げて15勝、打って34本塁打。投打で規定に到達して、なおかつ超人的な成績を残した大谷は、その思考も“超人的”だ。