「妻恋坂情死行」鳥羽亮氏

公開日: 更新日:

 これらの詩が、まるで歌舞伎の回り舞台装置のように作用し、鮮やかに場面転換していく。咲き誇っていた桜もやがて散り、ふたりの淡い恋情にも影が忍び寄る。ふさは、没落寸前の御家人の娘だった。京四郎はふさとの関係を家族から戒められ、剣術道場の仲間からは制裁を受ける。ついにふさは吉原に売られることとなり、京四郎は小暮家を出奔。ふさに会うために辻斬りに身を落とす。

「相愛の男女が変わらぬ愛を誓って一緒に死ぬのが情死ですが、京四郎とふさは自らは死を選びません。死んでしまったら、二度と会えなくなる。あの世ではなく現世で結ばれていたいと願い、生きようとするふたりの強い思いを描きました」

 生き地獄の中でも思いを貫く、愛の本質に迫る物語だ。

「正直、こんなに苦労した作品はない(笑い)。恋愛ものは、最初で最後です。次回からは気持ちも新たに剣豪小説を書いていきたいですね」

(幻冬舎 1600円)

▽とば・りょう 1946年生まれ。90年に「剣の道殺人事件」で第36回江戸川乱歩賞受賞。自らの剣道体験を素材に「八丁堀剣客同心」「剣客旗本奮闘記」「半次と十兵衛捕物帳」など多数の剣豪小説を発表している。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    都知事選2位の石丸伸二氏に熱狂する若者たちの姿。学ばないなあ、我々は…

  2. 2

    悠仁さまの筑波大付属高での成績は? 進学塾に寄せられた情報を総合すると…

  3. 3

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  4. 4

    竹内涼真“完全復活”の裏に元カノ吉谷彩子の幸せな新婚生活…「ブラックペアン2」でも存在感

  5. 5

    竹内涼真の“元カノ”が本格復帰 2人をつなぐ大物Pの存在が

  1. 6

    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

  2. 7

    二宮和也&山田涼介「身長活かした演技」大好評…その一方で木村拓哉“サバ読み疑惑”再燃

  3. 8

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  4. 9

    小池都知事が3選早々まさかの「失職」危機…元側近・若狭勝弁護士が指摘する“刑事責任”とは

  5. 10

    岩永洋昭の「純烈」脱退は苛烈スケジュールにあり “不仲”ではないと言い切れる