「もうすぐ絶滅するという煙草について」キノブックス編集部編
冒頭、芥川龍之介の俳句「紙巻の煙の垂るる夜長かな」の紹介で始まる本書は、たばこについて書いたり、語ったりした作家らのエッセーをまとめたものだ。
例えば「オーパ!」など数々の名作ルポルタージュを世に送りだし、無類の愛煙家で知られた開高健(1989年没)はインタビューでこう言う。
「たばこの効用ってのは、煙にあるんじゃないだろうか。ユラユラ、モクモクと動く煙を見ているうちに、無意識に心が解放されていくんやね。暗闇のなかでたばこを吸ってごらんなさい。味も何もしやしない。第一、吸う気にもならない」
他に、たばこは献酬(お酒を酌み交わすこと)と同じく、見ず知らずの人からもらってもよいもののひとつだが、これは共に「共同体立ち上げの儀式」であったことの名残ではないかという、哲学者の内田樹や、浅田次郎、安西水丸、島田雅彦らのエッセー42編を収録。
(キノブックス 1500円+税)