「敗れども負けず」武内涼著
冒頭の作品「管領の馬」の主人公は、関東管領・山内上杉憲政。甲陽軍鑑にも「生得昏愚にして武将の器なし」とまで酷評されている。物語は北条氏康軍に攻め込まれ、憲政の跡取り息子・龍若丸(13歳)が守る支城が落城寸前。城を失えば、本城の壊滅ばかりか、跡継ぎを失うことになる。
上杉軍も奮戦したが、城は落城。ほうほうの体で、憲政以下は逃げるのだが、長尾景虎に管領職と上杉姓を譲ることにする。上杉謙信の誕生だ。 後に謙信率いる「反北条連合軍」による小田原城包囲などさまざまな激動を関東に引き起こす。 ほかに、龍造寺隆信、北条政子ら敗軍の将を主人公にした異色の5短編時代小説を収録。 (新潮社 1600円+税)