元ベトナム駐留海兵隊員が30年ぶりに再会

公開日: 更新日:

 アメリカのテレビ用映画が日本では劇場公開される。昔よくあったパターンだが、昨今はこれがネット配信映画に変わりつつある。だが、あなどるなかれ。この手の作品には低予算だからこその秀作が交ざっているもの。その見本が現在、都内公開中の「30年後の同窓会」だ。

 なるほど主役も3人のサエないオッサン。ただし同窓会ではなく正しくは「戦友会」。19歳でベトナム駐留の水兵だったラリーが、兄貴分の海兵隊の軍曹コンビを30年ぶりに訪ねて来る。1人はしがない酒場のオヤジに収まった楽天家のサル。もう1人がなんと南部バプテスト教会の牧師になった、海兵きっての暴れ者ミューラー。戦争が終わってからは音沙汰ひとつなかった彼らだが、内気で控えめで物静かなラリーにはどうしても昔のアニキたちでなければ頼めないことがあった……。

 舞台向きの訳ありな話だけに脚本と役者、そして監督の腕がないと成り立たないが、見事に三拍子そろってしみじみと心に残るコメディーに仕上がった。コメディー? そう、ベトナムでの失敗と今日のイラク戦争の愚行が交差する現代アメリカの深い失意は、人生の苦い真実を知るオジサンたちならではの冬枯れの喜劇として描かれるにしくはないのだ。製作元はアマゾン・スタジオ。世界市場向けの凡庸な大作に傾きがちな既存の映画メジャーと違って、小粒でも味わい深い小品はこういう製作元が向いているのかもしれない。

 映画は喜劇だが、男たちの心の暗部は「汚れた戦争」の悪夢に由来する。アレン・ネルソン著「ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?」(講談社文庫 419円)はベトナムの戦場で狼藉のかぎりを尽くした元海兵隊員の告白録。深刻なPTSDから立ち直り、来日して日本の子どもらに聞かせた児童書だけに、嘘を語らぬ決意をにじませた一冊。

 <生井英考>

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    都知事選2位の石丸伸二氏に熱狂する若者たちの姿。学ばないなあ、我々は…

  2. 2

    悠仁さまの筑波大付属高での成績は? 進学塾に寄せられた情報を総合すると…

  3. 3

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  4. 4

    竹内涼真“完全復活”の裏に元カノ吉谷彩子の幸せな新婚生活…「ブラックペアン2」でも存在感

  5. 5

    竹内涼真の“元カノ”が本格復帰 2人をつなぐ大物Pの存在が

  1. 6

    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

  2. 7

    二宮和也&山田涼介「身長活かした演技」大好評…その一方で木村拓哉“サバ読み疑惑”再燃

  3. 8

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  4. 9

    小池都知事が3選早々まさかの「失職」危機…元側近・若狭勝弁護士が指摘する“刑事責任”とは

  5. 10

    岩永洋昭の「純烈」脱退は苛烈スケジュールにあり “不仲”ではないと言い切れる