「選んだ孤独はよい孤独」山内マリコ著
子どもの頃から、なぜか班長や学級委員などの役回りを担うことになりがちな「ぼく」は、入学したサッカーの強豪高校で1年上の先輩たちが素晴らしい成績を叩き出していくのを目撃する。
全国大会優勝というお祭り騒ぎのなか、強豪ぞろいの先輩がごっそり抜けて代替わりした次の年のことをふと考える。きっと自分がキャプテンに選ばれ、華々しくないメンバーを率いることになる。そう気づいた途端、胃が痛くなってくるのだった……。(「さよなら国立競技場」)
2008年に「16歳はセックスの齢」で「女による女のためのR―18文学賞読者賞」を受賞して以来、女のリアルを描いてきた作家が初めて描いた、男の「生きづらさ」がテーマの短編小説集。
男社会の掟にがんじがらめになり、生き方を選べない男たちの生態を鋭い観察力で描写する。妻から突然浴びせられる暴言、本当は言いたくても言えなかった本音など、恐ろしいほど身に覚えのある言葉に遭遇すること必至だ。
(河出書房新社 1200円+税)