「広辞苑先生、語源をさぐる」新村出著
あの国民的辞書「広辞苑」の編纂者がさまざまな言葉の起源について記した名エッセーの復刻。
元禄時代に日本語の主な言葉の語源の解釈を試みた貝原益軒は、「日本釈名」という書物で、「月」は尽きる、欠けて尽きていくのだからツキというのだと説いたという。しかし、著者は太古の原始人が月の満ち欠けを知り分けて、満ちていく方ではなく、欠けていく方に注意を払って名付けたとすることに疑問を投げかける。その上で、「時(トキ)」という概念は恐らくは月という言葉から発したものであると、自説を展開する。その他、空やしぐれなど天文や気象にまつわる言葉から、訳語である象徴や自由、そして虎や毒だみなどの動植物まで。文典を駆使しながら縦横無尽に語る。
(河出書房新社 720円+税)