「東京の子」藤井太洋著
物語の舞台は、2023年の東京。オリンピック後の東京は、人口減を補うために受け入れた外国人労働者であふれていた。失踪する労働者も後を絶たず、彼らを連れ戻す仕事を請け負っているのが主人公の舟津怜だ。
子ども時代に保護施設で暮らしていた舟津は、施設を出た後に酷い親に捕まらないよう、15歳のときに戸籍を買い、仮部諫牟という偽名で暮らしつつ、その際世話になった大熊に仕事を紹介してもらっていたのだ。
そんなある日、彼はオリンピック跡地にできた、働きながら学べる大学校「東京デュアル」の料理店スタッフであるベトナム人のファム・チ=リンの捜索を依頼される。行方を突き止めた舟津は、就職先も斡旋してもらえる上に奨学金サポートもあるという触れ込みの「東京デュアル」の本当の姿を、彼女が告発しようとしていることを知るのだが……。
スマホで執筆した小説「Gene Mapper」がKindle小説売り上げ第1位になったことをきっかけに、小説家に転身した元エンジニアによる近未来小説。
昨今の社会情勢の先に何が待っているのか、数年後の日本を予見したかのような小説となっている。
(KADOKAWA 1600円+税)