「全館訪問取材中村元の全国水族館ガイド125」中村元著

公開日: 更新日:

 平成の30年間で大きく変わったもののひとつが実は水族館だという。巨大、さらにその上をいく超巨大水族館が各地に続々と誕生し、全水族館の利用者数は動物園のそれを上回るそうだ。 

 本書は、日本で唯一の水族館プロデューサーとして多くの施設で展示計画や運営に携わってきた著者が、プロと利用者の双方の視点から解説してくれるガイドブック。

 水量、建物とも日本最大の「名古屋港水族館」(愛知県)は、動物に全く興味がない人でも、「水塊」感あふれる水槽や命の織り成す美しい光景に必ずや感動するはずと太鼓判の施設。水塊とは著者の造語で、海や川の水中から、そこに見え感じるすべての感覚を塊にして切り取ってきたものを展示するという水槽のあるべき姿を意味する。

 鯨類の進化をテーマにした同水族館北館に入ると、シャチの親子に出迎えられる。その巨体がふわりと浮く浮遊感で、一気に水塊に包まれるという。シャチと目が合う興奮を味わいたいなら、シャチがもっとも愛想がいい開館直後を狙うべしと、隠れ技も伝授。

 他にも、現在のクラゲブームの火付け役となったクラゲの飼育種類数と個体数で世界一の「鶴岡市立加茂水族館」(山形県)や、琵琶湖水系と古代湖だけにこだわった「琵琶湖博物館」(滋賀県)など個性的な水族館や、泳ぐ魚を見ながら福島の魚介類で握った本格的な寿司が食べられる寿司処が水槽前にある「アクアマリンふくしま」(福島県)、日本一のイルカショーをはじめとする海獣ショーや、日本で唯一、コウテイペンギンの繁殖に成功するなどペンギン展示も充実の「アドベンチャーワールド」(和歌山県)など、全国の施設を網羅。

 猛暑が予想される夏の行楽地として涼しげな水族館はお勧めだ。

(講談社ビーシー 2700円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    永野芽郁“”化けの皮”が剝がれたともっぱらも「業界での評価は下がっていない」とされる理由

  2. 2

    ドジャース佐々木朗希の離脱は「オオカミ少年」の自業自得…ロッテ時代から繰り返した悪癖のツケ

  3. 3

    大阪万博「午後11時閉場」検討のトンデモ策に現場職員から悲鳴…終電なくなり長時間労働の恐れも

  4. 4

    “貧弱”佐々木朗希は今季絶望まである…右肩痛は原因不明でお手上げ、引退に追い込まれるケースも

  5. 5

    遠山景織子の結婚で思い出される“息子の父”山本淳一の存在 アイドルに未練タラタラも、哀しすぎる現在地

  1. 6

    桜井ユキ「しあわせは食べて寝て待て」《麦巻さん》《鈴さん》に次ぐ愛されキャラは44歳朝ドラ女優の《青葉さん》

  2. 7

    江藤拓“年貢大臣”の永田町の評判はパワハラ気質の「困った人」…農水官僚に「このバカヤロー」と八つ当たり

  3. 8

    天皇一家の生活費360万円を窃盗! 懲戒免職された25歳の侍従職は何者なのか

  4. 9

    西内まりや→引退、永野芽郁→映画公開…「ニコラ」出身女優2人についた“不条理な格差”

  5. 10

    遅すぎた江藤拓農相の“更迭”…噴飯言い訳に地元・宮崎もカンカン! 後任は小泉進次郎氏を起用ヘ