「脳科学者が教える本当に痩せる食事法」スーザン・P・トンプソン著 青木創訳
食べなければ痩せられる。これほど簡単なことなのに、なぜダイエットに失敗するのか。脳科学者である著者は、意志の強さなどには関係なく、“脳が減量を妨げているため”と断言している。
意志力とは、その人固有の道徳心によるものと思われがちだ。しかし、意志力は単純な脳の機能であると本書。脳の中で意思決定をつかさどる前頭葉皮質の、すぐ後ろに位置する前帯状皮質が意志力をつかさどっているのだという。そして、どんなに意志力を働かせても、人間は1度に15分間程度しか自分を制御できないのだという。意志力は睡眠や瞑想のほか、グルコース(ブドウ糖)の摂取でも回復が望める。しかし、ブドウ糖を取り過ぎると快楽をもたらすドーパミンが過剰分泌され、やがて脳は過負荷に対応しようと、ドーパミンへの反応を鈍くする。快楽がもたらされなくなると、私たちはもっとブドウ糖を摂取しようとする。当然、ダイエットなど夢のまた夢。その仕組みは、ドラッグの摂取と何ら変わらないと著者は警告する。
それでは、私たちは何を食べれば痩せられるのか。本書では、野菜やタンパク質を十分に取りつつ、精白小麦粉などの穀粉と糖類を断つことを推奨している。脳にブドウ糖の供給が断たれると、ドーパミン漬けだった脳の機能が回復し、食への渇望が抑えられやすくなる。
最初のうちは、禁煙と同じように我慢が必要だ。しかし、最短で18日、平均して66日で、痩せる食事に慣れてくるという。ユニークなのが、この期間に運動はご法度ということ。運動すると意志力を消耗し、これを補うためにブドウ糖の過剰摂取が起きやすくなるためだ。
本当に痩せたいなら、脳の働きから学び直す必要がありそうだ。
(幻冬舎 1600円+税)