「R帝国」中村文則著

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批判封じ

 2016年5月から17年2月まで新聞連載された。「朝、目が覚めると戦争が始まっていた」というカフカばりの一文から始まる。近未来の島国R帝国が隣国のB国に宣戦布告したのだ。さらにY宗国のテログループが原発を占拠するという事件も起きる。R帝国は名ばかりの野党が存在するが事実上の一党独裁の強権政治が敷かれている。物語は、国の政治に疑義を抱き始めた矢崎とテログループの女性兵士アルファ、野党党首の秘書・栗原と秘密の抵抗組織Lのサキという2組の男女の視点で交互に語られ、この戦争の背後に潜む陰謀が明らかになっていく。

 辞書に「抵抗」という言葉が載っていないほど、批判を封じ込める「党」は、2組の未来を無残に打ち砕いていく。最後、かすかな希望の光がともされているのが救い。

(中央公論新社 720円+税)

【連載】名作でよむ破綻した近未来

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