「華氏451度」 レイ・ブラッドベリ著、伊藤典夫訳

公開日: 更新日:

思考禁止

 本書の執筆は1953年。SFの巨匠が描くのは、人間にものを考えさせてしまう本は有害であるとして一切の所有が禁止された未来社会の恐怖を描く。

 ガイ・モンターグは、個人が隠し持つ本を見つけては焼き払うのを職務とする焚書官。イヤホン型ラジオや巨大な壁テレビから愚にもつかない情報にさらされ、思考停止状態に追いやられることに疑問を持たなかったモンターグだが、近所に住む少女クラリスと出会って本を敵対視することに疑問を持ち始める。最期まで本を手放さずに焼け死んだ老女を見たモンターグは焚書官を辞め、自ら本を読む仲間に加わることになる……。

 トリュフォーが映画化し、そこでもプラトンや聖書を暗記して本の内容を守っているグループの姿が印象的だった。現代文明を鋭く風刺した不朽の名作。

(早川書房 860円+税)

【連載】名作でよむ破綻した近未来

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    無教養キムタクまたも露呈…ラジオで「故・西田敏行さんは虹の橋を渡った」と発言し物議

  2. 2

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  3. 3

    吉川ひなのだけじゃない! カネ、洗脳…芸能界“毒親”伝説

  4. 4

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  5. 5

    竹内結子さん急死 ロケ現場で訃報を聞いたキムタクの慟哭

  1. 6

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  2. 7

    木村拓哉"失言3連発"で「地上波から消滅」危機…スポンサーがヒヤヒヤする危なっかしい言動

  3. 8

    Rソックス3A上沢直之に巨人が食いつく…本人はメジャー挑戦続行を明言せず

  4. 9

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  5. 10

    立花孝志氏『家から出てこいよ』演説にソックリと指摘…大阪市長時代の橋下徹氏「TM演説」の中身と顛末