「『コロナうつ』かな?」和田秀樹氏

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 新型コロナウイルスの感染対策として推奨されたステイホーム。自粛は解除されたが今なお多くの人が外出を控えている。そんな中で、気分がめいる、気分がブルーだと訴える人が増えているという。

「新型コロナウイルスは、私たちの生活を大きく変えました。朝起きて会社に行き、終わったら少しお酒を飲んだりして帰る。そんな当たり前の生活ができなくなり、実はストレスを感じている人は少なくありません。確かにコロナから身を守るためには、ある程度の制約は必要ですが、あまりに不自由な生活が続くと、今度は心の健康が損なわれてしまいます。みんな、コロナにならなければ死なないような錯覚を持っていますけど、そうじゃない。感染を防ぐことだけが取りざたされている今、精神科医からのコロナ対策も必要だと思い、筆を執りました」

 本書は、新型コロナ禍がもたらした、もうひとつの問題「うつ」にスポットを当てた一冊。ブルーな気分を深刻なうつにしないための処方箋と、過度な自粛に警鐘を鳴らしている。

 うつ病の原因は事件に遭うなど心理的要因のほかに、幸せ感や精神の安定を生む神経伝達物質である「セロトニン」が減少する、生物学的要因でも起こることが分かっている。自粛によるうつはまさに後者で、疲れが取れない、イライラ、やる気が起きないなどの症状がある。多くの人が感じたブルーな気分などは、うつの前段階。放っておくと重症化する可能性が大なのだ。

「セロトニンの量は日光を浴びる機会が減ると減少するという特徴があるんですね。日光不足はメラトニンという睡眠物質も減らしますから、睡眠不足にもなる。加えて気分転換の外出もダメ、人にも会えなかったわけですから、ステイホームはうつ予備群をつくり出す最適な環境だったわけです。実際、私のクリニックに来た80代の男性は、地域の教室で講師をするほど元気でしたが、自粛が始まった4月くらいから食べられなくなり、ついには衰弱状態に。結局内科に入院することになったんですが、ブルーな気分からうつ病を誘発した典型例ですね」

 著者は自粛が始まったころから、こんな生活をしていたら絶対にうつが増えると、身構えていたという。ところが外出すると感染すると思うのか、重症化するまで来ない。決して「不要不急」でないと訴える。

「感染対策や医療崩壊の話ばかりで、人を閉じ込めておくとどんなことが起こるのかという議論はまったくされていませんよね。たとえば高齢者は足腰が弱り、ボケたような症状が出ています。将来的に要介護者が増えるだろうとみています。経済も回らず、今後コロナで死ぬより自殺者のほうが多くなるでしょう。3密であれ自粛であれ、いいことのように語られてきましたが、何にでも副作用があるんです。冬に向けまた感染者が増え、自粛要請があるかもしれません。けれど政府や感染症学者の言うことを聞いていたら、コロナにはかからないかもしれないけど、免疫が下がって健康を害します。私はマスクなど対策をしたうえで、今まで通り人に会ったり、出掛けたりすることを強くお勧めします」

 本書ではうつになりやすい思考パターンを紹介しているが、実は「自粛警察」も、うつの一歩手前だというから驚きだ。自粛警察の人々の言い分である「~すべき」思考は、とどのつまり自分自身も追い詰めるからだ。

「人に迷惑をかけてはいけないと思うと行動にブレーキがかかりますが、適度に外出しないことの危険性は知っておくことです。これを機に体を守ることだけでなく、自分の心を守るという観点も視点も持ってもらいたいですね」

 うつのチェックシートも掲載。思い当たる人は要注意だ。

(ワック 900円+税)

▽わだ・ひでき 1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒。精神科医・臨床心理士。国際医療福祉大学心理学科教授。著書に「感情的にならない本」「つかず離れず婚」など多数。

【連載】著者インタビュー

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