「熔果」黒川博行著

公開日: 更新日:

 かつて大阪府警暴力対策係の刑事だった堀内信也と、堀内の相棒で同じく刑事だった伊達誠一の名コンビが縦横無尽に活躍するシリーズ第4弾。

 物語は、ヤクザに襲われて左足が麻痺したため家に引きこもっていた堀内に、伊達から仕事の誘いが入るところから始まる。お世話になっているヒラヤマ総業が落札した競売物件に、厄介な占有屋が居座っているため、話をつけにいくというのだ。

 2人が乗り込んだその物件には、前科ありで現在執行猶予中の男・松本清美がいた。彼の経歴を調べたところ、金塊密輸で捕まったことがあり、博多で白昼起こった金塊強奪事件とつながっていることを確信する。まだ押収されていない消えた金塊を追って、2人は大阪から淡路島、湯布院、小倉を経て名古屋へと西日本を駆け回るのだが……。

 疫病神シリーズなど、暴力と混沌の世界を生きる男たちを描くことが得意な著者ならではの元刑事コンビシリーズ。アウトローが跋扈する世界のなかで試されるふたりの固い絆が頼もしい。殺伐とした世界と対照的なユーモラスな会話が楽しく、あっという間に読み進められる。

(新潮社 2090円)

【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    中日ポスト立浪は「侍J井端監督vs井上二軍監督」の一騎打ち…周囲の評価は五分五分か

    中日ポスト立浪は「侍J井端監督vs井上二軍監督」の一騎打ち…周囲の評価は五分五分か

  2. 2
    小池都知事が“アキバ降臨”も演説ドッチラケ…若者文化アピールに「うそつき!」とヤジ飛ぶ

    小池都知事が“アキバ降臨”も演説ドッチラケ…若者文化アピールに「うそつき!」とヤジ飛ぶ

  3. 3
    新関脇・大の里の「大関昇進の壁」を親方衆が懸念…看過できない“練習態度”の評判

    新関脇・大の里の「大関昇進の壁」を親方衆が懸念…看過できない“練習態度”の評判

  4. 4
    芸能事務所の社長には「三浦友和のNGみたいな子はいらないのよ」と言われた

    芸能事務所の社長には「三浦友和のNGみたいな子はいらないのよ」と言われた会員限定記事

  5. 5
    巨人・坂本勇人「一塁手で一軍復帰」に現実味…本人、チームともメリット盛りだくさん

    巨人・坂本勇人「一塁手で一軍復帰」に現実味…本人、チームともメリット盛りだくさん

  1. 6
    一門親方衆が口を揃える大の里の“問題” 「まずは稽古」「そのためにも稽古」「まだまだ足りない稽古」

    一門親方衆が口を揃える大の里の“問題” 「まずは稽古」「そのためにも稽古」「まだまだ足りない稽古」

  2. 7
    女優・沢田雅美さん「渡鬼」降板報道の真相で「本が一冊書けてしまうかな(笑)」

    女優・沢田雅美さん「渡鬼」降板報道の真相で「本が一冊書けてしまうかな(笑)」

  3. 8
    “もうひとつの首都決戦”都議補選「自民」は負け越し必至…「都ファ」は4候補が全員討ち死に危機

    “もうひとつの首都決戦”都議補選「自民」は負け越し必至…「都ファ」は4候補が全員討ち死に危機

  4. 9
    大谷への理不尽な「ボール球」ストライク判定は差別ゆえ…米国人の根底に“猛烈な敵愾心”

    大谷への理不尽な「ボール球」ストライク判定は差別ゆえ…米国人の根底に“猛烈な敵愾心”

  5. 10
    ヒデとロザンナ(6)8歳年上の東洋人にロザンナは「やばい、運命の人だわ」と直感し…

    ヒデとロザンナ(6)8歳年上の東洋人にロザンナは「やばい、運命の人だわ」と直感し…会員限定記事