高嶋哲夫(作家)
4月×日 「コロナ」から「ウクライナ」にニュースの主役が移って2か月がすぎた。田舎に住んでいると、コロナは騒ぎすぎと感じるが、ウクライナの惨状には現実味を感じる。ロシアと言うと満州、シベリア抑留の過去があるからか。
現在、シベリア、アラスカが舞台の本を書いている。永久凍土、オーロラ、白夜など、日本では体験できない現象も多く出てくる。ロシアは広い。なのに、なぜウクライナをという気にもなる。シベリアからベーリング海峡を隔てて、アメリカ最北の州、アラスカがある。「ALL ABOUT ALASKA アラスカへ行きたい」(石塚元太良、井出幸亮著 新潮社 2530円)を読んだ。いつか、アラスカに行きたい。
4月×日 香名山はな著「柿の隣に実るもの」(エネルギーフォーラム 1595円)が送られてきた。実はこの本、僕が選者の1人であるエネルギーフォーラム小説賞の第8回受賞作だ。この賞の募集要項には、「エネルギー・環境(エコ)・科学」にかかわる作品、とある。おまけに、「理系的頭脳で文学する」というキャッチコピーまで付いている。この言葉に文系の人は恐れをなすのか、応募作品は多くはない。しかし本作は、都会に疲れ果て、悩みをもって故郷に帰ってきた女性が主人公。田舎と都会を対比させ、自然の中で生きる男女の心のふれあい、子供とのやりとり、心の成長を丁寧に描いたものだ。普通の田舎暮らしから、自然の大切さ、美しさを十分に感じさせる。
4月×日 連日、物価上昇のニュースが伝えられる。コロナ、ウクライナと続くと文句も言えない。ロシアの制裁も当然。石炭、石油、天然ガスの輸入禁止による燃料代の高騰、それに伴いさまざまな値上がりも当然の結果。電気代にも影響が出る。だったら、原発を動かせばいいと思うのは僕だけか。
エネルギーに関する本としては、去年、「EV」を出した。電気自動車の話だ。2030年をメドに、いくつかの国でガソリン使用車の新車販売が出来なくなる。ハイブリッド車などは素晴らしい技術ではあるが、EVシフトは、理屈ではなく世界の流れなのだ。乗り遅れると大変なことになる。