努力で「脳力」は伸びるのか?脳の科学本

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「才能の科学」マシュー・サイド著 山形浩生、守岡桜訳

 科学が発達しても、やっぱり謎なのが人間の「脳」。「脳力」は生まれつきのものなのか、伸ばすことはできるのか、神経科学や神経解剖学などの専門家が書いた本をご紹介。



 1995年に卓球で全英トップになった著者は、子どもの頃、正式試合用の卓球台を買ってもらい、兄と何時間も卓球をした。全英トップクラスのコーチのすすめで地元クラブに入り、卓球漬けの日々を送る。だが、遺伝的な突然変異があったわけではない。環境に恵まれて人より先を行っていただけだ。

 また、1991年にフロリダ州立大学の心理学者が傑出した技能の調査を行った結果、最高のバイオリニストは音楽教師志望のバイオリニストより6000時間も多く練習していた。天才といわれるモーツァルトは6歳になるまでに3500時間も練習していたという。しかし、一流とその他を分けるのは訓練の多さだけではなく、本番で心に湧き上がる疑念に溺れず「勝てる」「成功する」と信じきれる能力である。

 人と組織の可能性を引き出す成長の法則を伝授する。

(河出書房新社 2200円)

「たった12週間で天才脳を養う方法」サンジェイ・グプタ著 伊藤理恵訳

 年をとると物忘れがひどくなるとか考えられているが、必ずしもそうではない。他の器官のように脳も鍛えることができる。脳を鍛えられるかどうかはその人のレジリエンス(回復力)の高さによる。人の寿命も遺伝で決まるのではなく、アルコールの摂取とか生活習慣で決まるのだ。

 脳の健康を維持するためには、①ウオーキングをしたり、スポーツジムを利用するなどして運動を増やす②絵画教室や料理教室などに通って認知機能に刺激を与える③7時間以上の睡眠をとる④間食をせず、一日の早い時間に食事をし、食べる量を減らす--などのよい習慣をつけることが重要である。その方法として、本書では12週間のプログラムを提示。すぐ実行できる脳によい食事法や、趣味の範囲や社会的交流の広げ方などの新習慣の具体的なリストを掲載している。

(文響社 1925円)

「図解 脳に悪い12の習慣」林成之著

 がんばっているのに成果が出ないなどの悩みは、脳の使い方を変えるだけでたいていは解決できる。脳に悪い習慣を把握してそれをやめればいいのだ。

 脳は「生きたい」「知りたい」「仲間になりたい」「伝えたい」という4つの本能を持っているが、好奇心を持つことが出発点。だから、関心を持たなくなると脳の働きは悪くなる。「自分は関心がない」と決めつけてしまうのはNGなのだ。

 また、「生きたい」という本能は「自分を守ろう」とし、「一貫性を保てない情報を避けよう」とするクセがある。スマホばかり見ていると、思考力が低下する。効率ばかり考えるのもよくない。そういうことを知っておいて、悪い習慣をやめるだけでも脳のパフォーマンスは上がるという。

 悪い習慣12を挙げて、そのやめ方をイラストで具体的に説明。

(幻冬舎 1000円)

「WHOLE BRAIN 心が軽くなる『脳』の動かし方」ジル・ボルト・テイラー著 竹内薫訳

 人の脳には4つの細胞群があり、著者はこれらをキャラ1.2.3.4と名付けた。これまで左脳が論理や思考をつかさどり、右脳が感情的だといわれていたが、実は左脳も右脳も感情的な大脳辺縁系の細胞群を均等に分かち合っている。

 キャラ1は左脳の、キャラ4は右脳の大脳皮質にあって思考をつかさどり、キャラ2は左脳の、キャラ3は右脳の大脳辺縁系にあって感情をつかさどっている。左脳と右脳をつなぐ脳梁を切断すると、その人は二重人格者のように振る舞う。ある紳士は左手で妻を叩こうとしながら、右手で妻をかばった。

 この右脳・左脳ブームにのって、親たちは子どもの生得の能力を両極端に偏らせた教育をするようになった。だが、優位でない側を発達させるための活動に参加させてバランスのとれた人間に育てることもできる。

 4つのキャラを使って人生を変える方法をアドバイスする。

(NHK出版 2200円)

「脳は世界をどう見ているのか」ジェフ・ホーキンス著 大田直子訳

 一つの細胞は文字を読んだり、ものを考えたりできない。それなのに、脳を作るのに十分な細胞がまとまると、本を読んだり、建物を設計したり、宇宙の謎を解明するということができるようになる。脳がどうやって知能を生み出すのかは、いまだに解明されていない。

 脳は世界の「モデル」を学ぶ。「モデル」とは、私たちが知っていることは事実の単なる蓄積ではなく、世界とそこに包含されるすべての構造を反映するように体系化されることを意味している。

 自転車とは何かということを知るために、脳はさまざまな部品がどう配置され、どのように連動して動くかという自転車のモデルを作り出すのである。脳にインプットされたさまざまな感覚は、どのようにして一つの経験として統合されるのか。神経科学と人工知能の研究者が、脳の謎に迫る。

(早川書房 2860円)

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