「月経の人類学」杉田映理、新本万里子編

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 近年、発展途上国への支援のひとつにMHM(月経衛生対処)推進が大きな課題となっている。MHMとは、女性および思春期の女子が困難なく衛生的な月経処理ができることだ。つまりは、処理が困難な人たちが数多くいるということで、しかも発展途上国だけではなく、イギリス、アメリカ、日本などでも経済的理由で生理用品を買うことができないという「生理の貧困」が生じている。

 本書は、パプアニューギニア、インドネシア、カンボジア、ウガンダ、ニカラグアなど世界各地のフィールドワークで得た月経処理の現状を分析し、各地域を比較することで国際開発の現場での支援に対する示唆を抽出しようというものだ。

 各地域の宗教や伝統的な月経観の違いによりMHM推進の対応はそれぞれ異なるが、どの地域でも使い捨て生理ナプキンはかなりの程度普及しており、使用済みのナプキンの廃棄に関して大きな問題となっているのは共通している。廃棄の問題で重要なのはトイレで、学校の場合、男子生徒に気づかれないような男女別の個室の確保、清潔にナプキンを交換できる水とスペースの確保などができない地域も少なくない。また学校には廃棄する場所がなく、やむなく家に持ち帰る者が多いというのも共通している。

 最後の章では日本の実態も紹介されている。日本は世界で最初に生理休暇制度を定めたにもかかわらず現在の取得率はわずか0.9%。医薬品の向上などもあるだろうが、申請しにくいという要因も多分にある。本書でも、月経に関して大っぴらに話すのがはばかられるという地域は多い。そのためにも本書はまず男性に読まれるべきだろう。

 最近では学校でも男子に対する月経教育を行ったり、テレビや雑誌で積極的に月経をテーマにすることが多くなってきた。男性がパートナーや同僚たちのことを知ることで、女性たちも自らのことを言いやすくなるに違いない。 <狸>

(世界思想社 3850円)

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