「カルトの花嫁」 冠木結心著

公開日: 更新日:

 始まりは、著者が高校生のときだった。突然、母親がとある宗教を信じ始め、数万円の数珠を購入するなど、まとまった金を使うようになったのだ。道場に通い、どっぷりとはまっていく様子は、子供の目から見ても明らかだった。

 やがて、著者はそれが世間を騒がせている統一教会だと知る。しかし、機能不全の家庭に育った著者は、かわいそうな母への親孝行になると信じ、勉強会に参加。そこで出会ったスタッフの優しさに心を打たれ、母と同様に信仰を中心とした生活に入っていく。

 高校卒業後は働きながら信者らと共同生活、祝福献金140万円を払って合同結婚式へ。2歳年下で19歳の韓国人と“祝福結婚”したが、夫のDVに耐えられず娘を連れて離婚。28歳のとき、2度目の祝福結婚をし、韓国の片田舎で新生活を始めるが、待っていたのは過酷な日々だった……。

 10代で入信し、20年を統一教会に翻弄されたカルト2世がつづったノンフィクション手記。献金と教義による支配、日本人であることへの罪悪感の植えつけなど洗脳されていくさまがリアルに伝わる。信者の自己犠牲の上に成り立つカルトの世界が、われわれのすぐ隣に存在していることに改めて恐ろしさを感じる。

(合同出版 1540円)

【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    大谷翔平を激怒させたフジテレビと日本テレビ…もっと問題なのは、情けない関係修復の仕方だ

    大谷翔平を激怒させたフジテレビと日本テレビ…もっと問題なのは、情けない関係修復の仕方だ

  2. 2
    悠仁さま「東大合格」の逆風になりかねない宮内庁“3年前の痛恨ミス”…トンボ論文の信頼性に影響も

    悠仁さま「東大合格」の逆風になりかねない宮内庁“3年前の痛恨ミス”…トンボ論文の信頼性に影響も

  3. 3
    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  4. 4
    「今市事件」服役中の勝又拓哉受刑者「『有希ちゃんを殺してごめんなさい』って50回言わされた」

    「今市事件」服役中の勝又拓哉受刑者「『有希ちゃんを殺してごめんなさい』って50回言わされた」

  5. 5
    ロッテ佐々木朗希 日本では「虚弱体質」の烙印も…米球団むしろプラス評価でゾッコンの理由

    ロッテ佐々木朗希 日本では「虚弱体質」の烙印も…米球団むしろプラス評価でゾッコンの理由

  1. 6
    なぜ大谷はオールスターで「最多得票」を取れないのか…圧倒的成績を残しながら首位と26万票の大差

    なぜ大谷はオールスターで「最多得票」を取れないのか…圧倒的成績を残しながら首位と26万票の大差

  2. 7
    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

  3. 8
    杉咲花&若葉竜也「親密報道」後も評価上昇 「アンメット」の演技にはゴシップを超える力がある

    杉咲花&若葉竜也「親密報道」後も評価上昇 「アンメット」の演技にはゴシップを超える力がある

  4. 9
    ドトールに注がれる「石丸効果」都知事選でヒモ付き隠さず3番手から猛追、株価も爆上がり

    ドトールに注がれる「石丸効果」都知事選でヒモ付き隠さず3番手から猛追、株価も爆上がり

  5. 10
    まるで大使館…剛力彩芽&前澤社長の“100億円豪邸”を発見

    まるで大使館…剛力彩芽&前澤社長の“100億円豪邸”を発見