「ワンダーランド急行」荻原浩著
定例会議があるので、野崎修作はいつもより30分早く出かけた。
上りの通勤快速が来るまで時間調整で停車中の下りの車内に座っていたら、電車が発車してしまった。しかも急行だ。流れ去っていく車窓の風景を見ているとき、「脱出」という言葉が頭に浮かび、終点まで行ってみようと思いつく。
終点の改札の前に山があったので登ることに。トンネルを抜けて草原に出たら土と緑と太陽の匂いがした。自分が目指していたのはここだったのか。
自宅のある駅まで帰ってきたら、違和感があった。駅前にモニュメント時計なんてあったっけ?家に着いたら、玄関の鍵が開かない!
いつもと違う日常に入りこんでしまった男を描くミステリアスな物語。
(日本経済新聞出版 2090円)