「男装の天才琵琶師」佐宮圭著
「男装の天才琵琶師」佐宮圭著
昭和42年11月9日、ニューヨークフィルの創立125周年記念公演で武満徹作曲「ノヴェンバー・ステップス」が初演を迎えた。同曲でオーケストラと共演、一夜にして世界的名声を得た琵琶奏者・鶴田錦史の評伝。
明治44年に女性として生まれた氏は、7歳で琵琶師に入門。澄んだ高い声と見事な節回しですぐに天才少女琵琶師として注目を浴びる。22歳で最愛の人と出会い結婚するも浮気され、産んだ子どもは弟子に託すことに。
その後、事業に専念するが、空襲で全財産を失い、再び起業し、40歳過ぎから商売のために男装を始める。
ビジネスで成功後、52歳で残りの人生を琵琶だけに費やすことを決意して事業を整理した。
幼いわが子も、女性であることも、そして一時は琵琶も捨てて生き抜いたその波乱の生涯を描く。
(朝日新聞出版 1100円)