“日本を代表する女優”山本富士子 大映退社で出演不可能に
吉本興業の問題が世間の耳目を集め、「タレントと芸能事務所の関係」が注目された今夏。そこで取り沙汰された、芸能人が“干される”とは一体どういうことなのか。「芸能人はなぜ干されるのか?」の著者で、2017年には公取委で「独占禁止法をめぐる芸能界の諸問題」の講演も行ったジャーナリストの星野陽平氏が業界のタブーに肉薄する。
タレントの独立や移籍をめぐるトラブルは古くて新しい問題だ。
戦前には俳優の長谷川一夫が松竹から東宝に移籍した際、松竹側の差し金によってヤクザ者がカミソリで長谷川の顔を切りつけるという事件があった。
戦後になると、「俳優ブローカー」と呼ばれる業者により俳優の引き抜きが相次ぎ、映画会社の経営を圧迫。また、日活が戦時中に中断していた映画製作を再開するため、俳優の引き抜きを活発化させた。
1953年、対抗策として当時の映画会社5社(松竹、東宝、大映、新東宝、東映)は五社協定という俳優の引き抜き防止カルテルを締結した。五社協定の成立で俳優の移籍は鳴りを潜め、映画界をむしばんでいった。有名なのが山本富士子(写真)のケースである。