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井筒和幸映画監督

1952年12月13日、奈良県出身。県立奈良高校在学中から映画製作を始める。75年にピンク映画で監督デビューを果たし、「岸和田少年愚連隊」(96年)と「パッチギ!」(04年)では「ブルーリボン最優秀作品賞」を受賞。歯に衣着せぬ物言いがバラエティ番組でも人気を博し、現在は週刊誌やラジオでご意見番としても活躍中。

国葬と民主主義を守ることは関係ない! 屁が理屈を吐いているだけだ

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 それで何が“戦後レジームからの脱却”だ。故人が思っていたのは何より憲法を変え、日米同盟をさらに強化し、「国防軍」とやらを米軍に従わせ、戦地に武器を持って駆けつけて集団で自衛できるようにすることだった。手始めに、戦前の国家のための教育を反省して「個人の尊重」を謳ってきた教育基本法を、公の精神だの、国と郷土を愛する態度だの、人の心の自由など後回しの新しい基本法に改変したのは随分前だ。ついでに「私が目指す『美しい国、日本』のためには次代を背負って立つ子供や若者たちの育成です」と連呼していた。挙げ句にあんな逆恨みの青年まで生んでしまったとはなんと皮肉な話だろう。「美しい国」が旧統一教会の元会長が説いた文句だと聞いて驚いた。

「戦後レジームからの脱却」はグローバル化で農業や漁業は多国籍企業に乗っ取られ、中小企業は買収され、小売店は当然のように片付けられ、社会保障のない非正規労働者ばかり増え、資産家だけが財を肥やし、雇われ人はいつまでも貧乏のまま、保守勢力が一点張りで社会支配していくための念仏だったのか。「国葬」も道具に使いながら、自民帝国が続くのかと思うとゾッとする。保守と同調空気に抗う表現者、負の歴史を暴く学者、ロックを歌うミュージシャン、アウトローを描く映画屋などは、知らぬ間に社会からスポイルされ、牙を抜かれて腑抜けになる予感がする。目を覚ませ! 現実を変えろ! と叫ぶ映画を作りたいもんだ。

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