欧州で広がる「王室のスリム化」を日本でやれないのは「女系天皇」を認めないからではないか

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 ヨーロッパで「王室のスリム化」が広がっていることを前回紹介した。では日本の皇室はスリム化が可能なのだろうか。明治、大正、昭和、平成、令和の5代を考えてみたい。

 明治維新で王政復古が成ると、それまで門跡になっていた元皇族たちが次々と還俗して宮家を名乗ったが、「旧宮家」で呼ばれる北白川宮、久邇宮、朝香宮、東久邇宮などはこの流れの中で誕生した宮家だ。時代は変わったとはいえ、国庫はそれほど潤沢ではなかったから、とりあえず新たな親王家は1代限りとした。時間をかけてスリム化を図ろうとしたのだろう。ところが、結局は特例として宮家の継承が認められ、旧宮家が皇室の藩屏として残っていく。そこにはさまざまな事情はあるが、天皇家の皇位継承に不安があったこともその一つだろう。

 明治天皇は15人の子供に恵まれたが、全員が正妻の子供ではなく、5人の側室から生まれている。女子が10人、男子が5人と子だくさんだが、圧倒的に女子が多い。そのうえ、生まれた男子のうち、4人が死産か早世して、育ったのは大正天皇だけという綱渡りのような皇位継承だった。これは父である明治天皇も同じだった。孝明天皇から生まれた男子は明治天皇ただひとりだったのである。

 こうしたことから伊藤博文らは女系天皇の容認をはかった。皇位継承者が男子でも女子でもよいとなれば皇位継承は安定するし、さらに皇族数を大幅に減らせて予算を削減できると考えたのだろう。しかし残念ながら、これは認められなかった。

 天皇家に男子が生まれにくいことや、早世する子が少なくなかったことから、大正天皇の妻には健康に育った女性を選んだ。それが貞明皇后である。期待通りに4人の男子が誕生して皇位継承は安定したのだが、これも一過性のことだった。

 長男である昭和天皇は2人の男子に恵まれたが、女子ばかりが続く中でやっと男子(上皇さま)が誕生したのである。

 だが、次男の秩父宮と三男の高松宮は子供に恵まれず、末弟の三笠宮は3人の男子に恵まれたものの、孫の代になると3人の男子から皇位継承者になる男子は1人も生まれていない。100年前には4人もの皇位継承者がいたのに、今では継承する男子が秋篠宮家の悠仁さまただひとりという崖っぷちに立っている。

 この150年間をみても、皇位継承が非常に不安定だったことははっきりしている。ヨーロッパの王室では、例えばデンマークのフレデリック皇太子のように男子2人女子2人と、王位継承者が非常に安定して誕生している。日本の皇室では、4人の男子が生まれたかと思えば、次世代後には男子がゼロ、もしくは1人と極端なのだ。どこに原因があるかは不明だが、ヨーロッパの王室のように「皇室のスリム化」ができないのは、この不安定さにあるとは言える。

 子供に恵まれない皇族もいるが、幸いなのは比較的女子が多く生まれていることだ。それなのに制度があって皇位を継げない。「男子を産まなければ!」というプレッシャーは、今の皇族には想像もできないほど大きなものだろう。実際に上皇后さまが結婚された頃は、暗に男子を産めと周囲からささやかれたというから、他の皇族も深刻に受け止めたはずである。それもこれも、皇位継承者を男子に限定しているからだ。

 もしも皇室が安定した皇位継承を維持していくなら女系天皇を認めるべきだ。国民が天皇に望むのは、男子でなければならないのではない。「この国に天皇がいてよかった」と、国民にそう思わせる天皇なのである。 (つづく)


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