菅野美穂「ゆりあ先生の赤い糸」は家族のあり方を問う今期の連ドラ一番の問題作
思えば、とんでもない設定のドラマだ。「ゆりあ先生の赤い糸」(テレビ朝日系)である。
伊沢ゆりあ(菅野美穂)は刺繍教室を営む主婦。売れない小説家の夫・吾良(田中哲司)が突然、ホテルで倒れる。くも膜下出血だった。一緒にいたのは夫の“愛人”だという青年、稟久(鈴鹿央士)だ。
昏睡状態の吾良を自宅に引き取ったが、認知症の義母(三田佳子)の世話もあり、ゆりあは稟久に介護の応援を求める。しかも、そこに現れたのが娘2人を抱えた、みちる(松岡茉優)だ。DV夫から逃げるみちるは、吾良の“彼女”だった。
そんな複雑な関係の面々が、“疑似家族”として一つ屋根の下で暮らしている。この異常事態を成立させているのは、何でも受けとめてしまう、ゆりあの「男前なおっさん」的性格だ。
しかし、ゆりあが年下の便利屋・優弥を好きになったこと、そして吾良の意識が戻ったことで、物語は急展開を迎えている。奇跡的に保たれていた疑似家族のバランスが大きく揺らぎ始めたのだ。
原作は入江喜和の同名漫画。脚本は草彅剛主演「僕の生きる道」の僕シリーズ3部作(フジテレビ系)などの橋部敦子である。一見奇抜な設定の中に介護、不倫、嫁姑、性的少数者、DVなど現代社会の課題を織り込みながら、夫婦や家族の「形」や「あり方」を探る、今期の問題作だ。