演歌歌手・松原のぶえさん(54) 腎臓病(腎移植)
医師が来るたびに「おかしい」とつぶやいているのが聞こえる。手術は失敗したのかも……と思っていた時、主治医の先生が他の医師の制止を振り切り、点滴の管を全部抜いたんです。すると、数時間後に尿意が戻った。荒療治に見えた施術がきっかけで回復に向かったのです。あのときは、尿意があることのありがたさに気づきました。
トータル1カ月ほど入院して退院後、最初に食べた外食は焼き肉です。それまでは食事制限でお肉はひと口がやっと。食の喜びが戻ったのは何よりうれしいことでした。
腎臓は機能していないと硬くなるそうで、1年くらいはいつも脇腹を触って弟の腎臓が大丈夫かを確認していました。また、弟が風邪をひくたびに心配で……。今は臓器提供者のアフターフォローもあるので安心ですが、それでも、もし弟に何かあっても、もらった腎臓は返せませんから心配なんですよね。
移植から6年。病院では、気を利かせて他の患者さんに会わないようにする“VIP対応”もご提案いただきましたが、一般の方と同じように通院しています。待ち時間は同じ病気の仲間から勇気づけられる貴重な時間になっているんです。私が頑張っていることで、少しでもみなさんを元気づけられたらと思っています。
▽まつばら・のぶえ 1961年、大分県生まれ。79年に「おんなの出船」でデビュー。同年、日本レコード大賞新人賞、日本有線大賞新人賞などを受賞。85年、NHK紅白歌合戦に初出場し、以後6回紅白に出場。新曲「能登みれん」をリリース。