“対象外”にも持続的効果 閉塞性動脈硬化症の新治療法とは
こういった患者に対し、人工透析と同じような血液浄化療法「血漿吸着療法」が効果を上げている。体外に排出した血液を血漿分離器で血球成分と血漿成分に分離し、血漿のみを吸着器で吸着する。このうち、動脈硬化の一番の原因となるLDLコレステロール(以下LDL)を吸着除去したうえで、血液を体内に戻す治療法だ。
ただ、保険適用になるのは、薬を使っても総コレステロール値が220(mg/dl)、またはLDL値が140以下にならない高コレステロール血症の人のみになる。しかし、ASOのリスクファクターはコレステロール値(脂質異常症)以外もあり、LDL値が正常の人も少なくない。
田村医師は重症の閉塞性動脈硬化症患者の治療を担当する中で、血漿吸着療法には2つの作用があることを証明した。「動脈硬化への増悪作用が強い酸化型LDL(LDLが血管内壁で変化したもの)を長期的に減少」と「炎症系や凝固系の成分の改善」だ。これらの作用によって、障害が大きい血管内皮細胞を活性化させることを突き止めた。
「血漿吸着療法によるLDLの低下効果は短期間しか認めませんが、閉塞性動脈硬化症の改善効果はある程度持続します。つまり、LDL値が正常であっても血漿吸着療法で血管内皮細胞を活性化させれば、ASOが持続的に改善できるのです」