もし「人工呼吸器はつけない」と希望する事前指示書があったとしたら…
Sさんは「妻はずっと病気で苦労してきたから、安らかに眠らせてあげよう」と考え、「もう何もしなくて結構です」と言いかけました。しかし、息子は「先生、できるだけのことをお願いします」と人工呼吸器の使用を希望し、娘も「お願いします」と同意しました。そんな子供たちの言葉に、Sさんは何も言えなくなったそうです。
それを受けた医師は「それでは挿管し、人工呼吸器につなぎます。隣の部屋で少しお待ちください」と、すぐに処置に取り掛かりました。人工呼吸器につながれたKさんは、血圧は安定しましたが、鎮静剤の作用もあってか、意識がない状態が続きました。
Sさんが、そんな妻の状態を友人に話すと、こう言われました。
「だから元気な時に自分自身の希望を書いておく『事前指示書』が勧められているんだよ。自分なら、意識がない状態になったら人工呼吸器はいらない。蘇生もしない。自然のままでいい。そう書いておくよ。意識がない状態で、ずっと生かされたら最悪だよ」
Sさんはなるほどと思いました。しかし、意識なく横たわっているKさんを見ると、複雑な思いです。