もし「人工呼吸器はつけない」と希望する事前指示書があったとしたら…
■助かってよかった…
人工呼吸器をつないでから4日後、担当医から「血液の酸素の状態が良くなってきました」と伝えられ、7日後には「挿管の管は口から入れておくのに限界があります。喉の所に穴を開けて、そこから呼吸器につなぎます。気管切開です。その後、鎮静剤を減らしていきます」と言われました。
そして2週間後には肺炎は好転。救急蘇生室から一般病棟へ移り、人工呼吸器は外されました。しかし、Kさんの意識はもうろうとしていて、Sさんのこともはっきり分からない状態が数日続いたそうです。
ある日、Sさんを見つめるKさんに笑顔が見られました。その時、Sさんはこう思ったといいます。
「あの時、もし妻が書いた事前指示書があって、『人工呼吸器はつけない。いざというときは何もしない』と記されていたら、きっと息子も娘もそれを見て納得しただろうし、医師もそれを尊重して、人工呼吸器はつけなかったかもしれない。そうしたら、いまの妻の笑顔は見られなかっただろう。これからも生きるのは大変だけど、つらいことがいっぱいあるだろうけど、笑顔の妻が、いまここにいる。助かって良かった」