医師の考えを押し付けて透析中止に誘導するのは許されない
それくらい成熟した“文化”として根付いてきているのに、非常に限定された地域の中で、「透析はこんなにつらいんですよ」とか「透析になったら生きていないのも同然ですよ」といったような誤解を招く知識を患者さんに提示し、透析を選ばないように誘導するのは許されないことです。仮に今回の福生病院もそうだったとすれば、透析を導入する前の段階で切り捨てられた患者さんは不幸だったとしか言えません。
日本透析医学会の最新の情報やガイドライン、新しいエビデンスをしっかり確認している医師なら、福生病院のように医師個人の考えを患者さんに押し付け、透析中止の選択肢を示すなんてことは恐ろしくてとてもできないでしょう。
限られた地域医療の中では、患者さんが頼れる医師が少ないという現実があります。ただでさえ足りていない医師が自己研鑚せずにお山の大将になってしまい、経験だけに基づいた自己判断を振りかざすと、不幸な結果を招いてしまう危険があるのです。今回の一件は、さまざまな問題が残る地域医療に対するひとつの警鐘だと私は考えています。