麻雀はなぜ脳にいいのか専門家が解説 活発に働く角回とは
ピエール瀧被告の出演で注目されることになった「麻雀放浪記2020」は、もとは戦後のドヤ街を舞台にした阿佐田哲也の娯楽小説。バクチに明け暮れた連中が、あの手この手のイカサマを駆使して勝負する。1984年に映画化されたときは、だれもが大技「つばめ返し」を練習したものだ。そんないかがわしいイメージが付きまとう麻雀が、高齢者の脳を活性化するという。そのメカニズムとは?
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いまどき麻雀卓を囲む人たちは、みな酒を飲まず、たばこも吸わない。主人公の坊や哲がヒロポン中毒者に身を落とす「麻雀放浪記」が描いた世界とは雲泥の差。日の当たらない怪しげな賭け事だったのは、今は昔だ。だれもが楽しめる健全なボードゲームに生まれ変わりつつある。
もっとも、環境は大きく変わっても、ルールは同じ。運の要素に左右されながらも、感覚を研ぎ澄まして、手を作っていく。なにせ敵は3人だ。自分の牌だけに集中していても勝てない。他のメンツの捨て牌、しぐさ、呼吸、会話から変化をくみ取る。だれかがテンパイしている様子があれば、当たり牌を手の内にとどめながらサクッと軽くあがってしまうことだ。臨機応変に対応できるかが勝負のカギになる。
そんなゲーム性が脳の刺激になるらしい。諏訪東京理科大教授の篠原菊紀氏(脳科学)はこう言う。
「麻雀は裏側を読もうとするゲームです。対面はテンパイしているんじゃないか、上家がこんなことを言っているのは高い手ができそうだからじゃないか、という具合に、目に見えないところに何があるのか思案を巡らせます。そんなときに活発に働くのが大脳の角回と呼ばれる部分。角回は想像力に関わるところで、損傷すると比喩を理解できなくなることが分かっています。そこが麻雀によって鍛えられるわけです」
トランプや花札などのカードゲームにも裏をかく、本音を読むといった要素があるが、麻雀は役の数が多くて複合的。それだけに角回をフル稼働してイマジネーションを膨らませなければならない。なまった脳にとって、これは格好のトレーニングだ。しかも、囲碁や将棋のように対等の状態から始めるわけではなく配牌やツモの運に左右される。経験や実力がある人が勝つとは限らない。そこも脳にとってはプラスのようだ。
「脳の活性化に必要なのはギャンブル性です。自分が思い描いた展開から和了できた場合、脳はドーパミン神経系の働きによって快感を覚えます。ただし、いつも同じように勝てるようになって慣れてしまうと、快感はどんどん弱まります。ドーパミン神経系に刺激を与え続けるには、勝ったり負けたりするのがいい。しかも、実は快感は、結果ではなく、予測したときに高まります。“これは勝てる”と思えた時がピーク。不安定な要素があるほど、予測時の快感は大きいのです」(篠原菊紀氏)
展開を読み、こうすれば勝てそうだと予想する。そうやって勝ったり負けたりするのは、競馬や競輪、ボートレースなどの公営ギャンブルも同じだ。パチンコやパチスロの不確実性も脳にはいい刺激になる。
脳の若さを保つために、これからもギャンブルを大いに楽しもうではないか。