【ウドの焼き浸し】アク抜きせず香りと苦味を丸ごと味わう
生命体に必要な栄養素が過不足亡く含まれ、健康にそのまま反映される
ホールフーズといえば米国の自然食品スーパーマーケットチェーン。どの店舗も広大なスペースに新鮮な有機食材が満載、いつも買い物客で賑わっている。肥満が多い米国人だが、心ある人は食へのこだわりと健康志向が異常に強い。
ところで、ホールフーズの原義は「丸ごと食品」ということ。丸ごと、つまり小魚なら頭から尻尾まで、野菜なら葉っぱ、茎、根っこまで全部を一挙にいただくことが、一番正しい食べ方である、ということ。
なぜなら丸ごと食品にはその生命体に必要な栄養素が過不足なく含まれており、それは我々人間の健康にそのまま反映されるからである。トロとか霜降りとかキモなどもそれなりにおいしいが、ホールフーズの視点から見ると、生命体の一部には栄養に偏りが出る。
さて、今回の食材は旬のウド。ウドの大木という言い方もあるが、それだけ成長が早いということ、つまり植物体の中を激しく栄養素が動いている証拠。成長点の穂先には糖質とアミノ酸が集中。甘味とうま味が凝集されている。皮は食物繊維、身はミネラルやビタミンの宝庫。これぞホールフード。
(福岡伸一)
▽福岡伸一(ふくおか・しんいち) 1956年東京生まれ。京大卒。米ハーバード大医学部博士研究員、京大助教授などを経て青学大教授・米ロックフェラー大客員教授。「動的平衡」「芸術と科学のあいだ」「フェルメール 光の王国」をはじめ著書多数。80万部を超えるベストセラーとなった「生物と無生物のあいだ」は、朝日新聞が識者に実施したアンケート「平成の30冊」にも選ばれた。
▽松田美智子(まつだ・みちこ) 女子美術大学非常勤講師、日本雑穀協会理事。ホルトハウス房子に師事。総菜からもてなし料理まで、和洋中のジャンルを超えて、幅広く提案する。自身でもテーブルウエア「自在道具」シリーズをプロデュース。著書に「季節の仕事」「調味料の効能と料理法」など。
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