迷惑をかけるから安楽死を──それではあまりに悲惨過ぎる
「医者というのは、人間の社会から、殺害するために任命されたのでしょうか。医者が任命されたのは、できるかぎり命を救い、できるかぎり助け、そしてもう治せないときには看護するためではなかったでしょうか」
安楽死制度を考える会は「耐え難い痛みや辛い思いをしてまで……」と言っています。しかし、現代は緩和医療の発達で、肉体的な痛みをコントロールすることができるようになりました。もし、死を前にして痛みなどでどうしても苦しい時には、「セデーション」と呼ばれる意識の低下を継続して維持する(持続睡眠)対処も可能になっています。ですから、彼らの言うことはほとんど当たらなくなっているといえます。
■人生の最期を自分で決めるのはとても難しい
また、彼らは「家族などに世話や迷惑をかけたくない」とも言っています。しかしいくら健康でも、人は年を重ねるほど体力は衰え、身体的な苦痛は増えます。頭がしっかりしていても衰えてきます。人間、どうしても他人に迷惑をかけることになってくるのです。
いまの日本は、多くは独居か1世帯2人です。一方が年老いて、あるいは生計のために仕事をしていて、もう一方の家族を世話するのは難しくなってきています。長時間ヘルパーさんを雇えるお金持ちは別ですが、家族に迷惑をかけないことは無理になってくるのです。