トイレで用を足したとたんに…「排尿失神」のメカニズム
反射性失神は「副交感神経が過度に働いて起こる」といいましたが、これは「迷走神経反射が過剰に反応して起こる」と言い換えることができます。「迷走神経」とは、頚部・胸部内臓と腹部内臓の一部を支配する副交感神経のことです。
■原因は迷走神経の過剰な働き
自律神経には交感神経と副交感神経があります。交感神経は血圧を上げたり、心拍を上げたりする働きがあります。副交感神経は逆に血圧を下げたり、心拍を下げたり、消化管の働きを活発にする働きがあります。通常は交感神経と副交感神経がバランスを保って心身の機能を調節しています。そして「迷走神経反射」は、交感神経の働きが高まった後に起こる、自律神経のバランスを保つ生命の防御反応です。
これを排尿失神が起こるメカニズムで説明するとこうなります。
ビールなどを大量に飲んで膀胱(ぼうこう)に尿が充満すると、反射的に血管収縮(交感神経が働く)が起こります。そして排尿をすると迷走神経反射(副交感神経が働く)によって血管が拡張します。
ところが迷走神経反射が過剰に反応すると、血管の拡張が強過ぎて血圧が下がり過ぎて失神してしまうのです。
反射性失神には有効な薬はありません。トイレで失神すると、便器で顔や頭部を強打する危険性がありますので、十分注意しましょう。