新型コロナの新たな後遺症に「ED」が浮上 世界で報告相次ぐ
■症状が消えてもウイルスは長期間生存の可能性
さらに最近、興味深い報告が米国のマイアミ大学ミラー医学部の研究グループからもたらされた。
かなり前に新型コロナに感染した2人の患者で、陰茎手術をする際に採取した陰茎組織を調べたところ、いずれからも陰茎血管内皮から新型コロナウイルスが発見され、PCR検査でも陽性が確認されたという。さらにこの2人は血管壁を拡張させる一酸化窒素合成酵素が減り、陰茎動脈拡張能が落ちていることも証明された。
これは、症状が消えても新型コロナの感染が持続している可能性を示唆するとともに、陰茎の血流を増大させることで勃起するシステムを阻害する可能性を意味する。
東邦大学医学部名誉教授で、心臓や血管が専門の東丸貴信医師が言う。
「新型コロナウイルス感染症がEDを引き起こす可能性は十分あります。というのも、新型コロナ感染症の本態が血管内皮障害であることが分かっているからです。血管内皮には新型コロナウイルスの細胞への侵入口であるACE2受容体が多く発現しており、感染しやすい状態にあります。しかも血管内皮細胞は、血管を拡張させる一酸化窒素やこれを縮めるエンドセリンなど数多くの血管に働きかける物質を分泌していて、血管壁の伸び縮みから、血管壁への炎症細胞の接着、血管の透過性の調節などを行っています。そこにウイルスが感染すれば、ウイルスの侵入増殖や活性酸素分泌などで内皮細胞を傷つけ、炎症と免疫反応が生じる。それが毛細血管や大血管を通じて全身の臓器に広がることで、末梢循環不全や血栓症が生じるのです。よく、糖尿病の人はEDになりやすいと言われますが、それは高血糖により血管内皮障害が起きて陰茎動脈の拡張不全が生じるからです。それと同様に、新型コロナ感染症では、内皮障害などによる陰茎動脈の拡張不全や血栓症により、EDが生じる可能性があると考えられます」