春にぐっすり眠るために実践したい2つのポイント 4月の睡眠が今後の快調につながる
厳しい寒さが和らぎ、暖かい日が多くなってきた。気温が上昇する春は代謝率が上がり、心拍数や血圧もアップして活動量が増える。その分、体は疲労するため、しっかり眠って回復させる必要がある。逆に春の睡眠の質が低下すると、いわゆる“五月病”といわれるような心身の不調につながるリスクがある。春の睡眠で意識すべきポイントを東京疲労・睡眠クリニック院長の梶本修身氏に聞いた。
日本では「新年度」となる4月は、生活環境が大きく変わる季節だ。学生なら入学や進級、社会人であれば入社や部署異動、それらに伴う引っ越しなどで生活パターンや人間関係が激変し、意識していなくても緊張を強いられる環境にさらされる。
「さらに今年の4月は、新型コロナウイルスの感染拡大予防のために実施されてきたリモートワークが解除され、通勤や通学を再開してコロナ以前のスタイルに切り替える会社や学校が増えています。その分、新しい環境や生活リズムに適応しなければならないので、それだけ強いストレスを受けることになる。すると、自律神経の疲弊が増大してしまうのです」
自律神経は、活動時や昼間に活発になる交感神経と、安静時や夜に活発になる副交感神経の2つの神経系統で成り立っている。体温、血圧、呼吸、心拍数、消化吸収、睡眠、摂食など、生命活動を維持するためのさまざまな働きは、すべて自律神経のバランスによってコントロールされている。
「4月に自律神経に大きな負担がかかり、そのまま疲弊した状態で生活を続けていると、数カ月後には五月病に代表される心身の不調を招く恐れがあります。だからこそ、4月は自律神経をしっかり休める必要があり、そのために何より重要なのが質の高い睡眠なのです」
そこで、春の睡眠で注意すべきポイントを解説してもらった。
①室温を管理する
暖かい気候になってきたとはいえ、朝晩はまだ冷え込む日も少なくない。暖かいからと薄手の寝具で眠りにつくと寒さで明け方に目が覚めたり、睡眠の質が落ちてしまうケースがある。
「エアコンなどを活用して、室温を18度以上に維持することが大切です。日本睡眠科学研究所の研究では、最も熟睡できる理想的な布団の内部の温度は『33度プラスマイナス1度』だとされています。われわれの体には内臓を含めた体の中心部の体温にあたる『深部体温』があり、深部体温を下げることで深い睡眠へ誘います。そのため、睡眠中は適度に放熱して深部体温を下げようとします。この仕組みによって布団の中の温度が33度前後に維持されるのです。しかし、室温が18度以下になると布団内の温度も下がり、体温を上げようと交感神経が高まり、睡眠の質が低下してしまうのです」
②朝の習慣を見直す
質の高い睡眠は、朝の行動に大きく左右されるという。
「睡眠リズムを整えることが重要です。まず、毎朝決まった時間に起きる習慣を身につけましょう。起床時間が1時間遅くなると、リズムを戻すためには1日かかります。ですから、休日の起床時間が普段より3時間遅い人は、翌週の半ばまでリズムが戻らず不調を引きずることになります。睡眠時間を増やしたい場合は、起床を遅らせるのではなく、就寝時間を早めるようにしてください」
朝、目覚めたらすぐにカーテンを開け、日の光を浴びることも大切だ。
「睡眠ホルモンと呼ばれるメラトニンは神経伝達物質のセロトニンをもとに作られます。われわれの体は日の光を浴びるとセロトニンの分泌をはじめ、脳と体を覚醒させます。夜になると、そのセロトニンからメラトニンが合成され、自然に眠れるようになります。ですから、朝に光を浴びてセロトニンをしっかり作っておく必要があるのです」
朝食をきちんと食べることも睡眠の質を高くする。
「朝食は自律神経を目覚めさせる重要なスイッチです。朝にしっかりスイッチを入れることで、その日の生体リズムがつくられ、睡眠リズムも整ってきます。朝食を取って消化管を動かすことは自律神経にとって適度なウオーミングアップになるのです。お腹がすいていない場合でも、ヨーグルトやプリン、果物など、何かしら口を動かして食べることで、自律神経を優しく自然に目覚めさせることができます。起床してから1時間以内に取るのが理想的です」
春に質の高い睡眠をとって、これからの季節を快調に過ごしたい。