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中川恵一東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

前立腺がんの新たな血液検査の利用価値 PSA検査より高精度

公開日: 更新日:

 そこで弘前大のグループはPSAに連なる糖鎖に注目。前立腺にがんができると、その構造が変化することを突き止め、その構造の違いを調べるための血液検査の仕組みを開発したのです。

 臨床試験で前立腺がんが疑われる439人を調べたところ、がんかどうかを区別する精度がPSA検査より2倍近く高いという結果が得られました。研究グループは、PSA検査で数値が高い人に2次的にこの検査をすることで、4割前後の針生検を回避できるとしています。

 前立腺肥大でもPSAが10を超えることは珍しくないため、血液検査で前立腺がんを絞り込めるのは歓迎です。前立腺がんは、日本人男性の9人に1人が罹患(りかん)します。この検査がもたらす影響は大きいでしょう。

 ただし、注意点もあります。前立腺がんは、他のがんに比べると穏やかなことがあり、たとえ前立腺がんができても死因にならないことがあるのです。その割合は、70代で2割、80代で3割、90代で5割と少なくありません。

 こうした穏やかなタイプについては、手術や放射線などをせず経過観察のみにとどめる監視療法で様子を見ます。もし悪性度が上がって悪さをしそうなら、そのタイミングで治療をするのです。今回の検査方法の開発で前立腺がんの絞り込みが進むことは歓迎ですが、過剰診断・過剰治療で監視療法がおろそかになる懸念はあるかもしれません。

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