認知症の親が施設入居を拒否するのはなぜか…具体的な促し方は?
「認知症と診断されたプライドの高い父が、施設への入居をかたくなに嫌がっています。どうすればいいでしょうか」──。ご家族から相談を受ける機会の多い質問のひとつに、施設入居の拒否があります。
認知症が軽度の場合は認知機能が保たれているので「自由が制限される生活をしたくない」、プライドが高い方であれば「老人が集まる場所に行きたくない」と考える傾向があります。中等度以上の場合では、認知機能の低下によって自分が認知症であるという病識がないので「なぜ元気な自分が施設に入らなければならないのか」と、状況を理解できず拒否を示すのです。
また、本人が「介護は家族がするもの」と先入観を持っていると、施設に入れるということは自分は見放されるのだといった「見捨てられ妄想」を抱く方も少なくありません。
アルツハイマー型認知症と診断された80代の女性は、独居で、近所に暮らす娘さんが時々様子を見に行っていました。ただ、やはり心配なので施設に入ってほしいと伝えたところ、「住み慣れた自宅から離れて暮らすのが不安」と入居を拒否されました。しかし、たまたま気晴らしに参加したデイサービスの体験イベントにイケメンの理学療法士がいたことで本人が喜び、生き生きして自ら進んでデイサービスに通うようになったといいます。通所を通じて施設に対する抵抗感がなくなり、最終的には入居を受け入れてくれたそうです。認知症の人は知らない人や環境に対して非常に強い不安を感じやすい。なぜ施設へ入りたくないのか理由をよく聞き、新しい環境に対する不安を感じているのであれば、いきなり施設ではなく、デイサービスの見学や体験から始めてください。その際、無理強いすると拒否感が強まるので、デイサービスで開催されているお祭りやお茶会、足浴など、本人が興味を持ちそうなイベントから足を運んでみるといいでしょう。