打たれ弱い子どもの心のメカニズム…「感情不全」に陥っている
逆に私自身は、どうしても価値を見出せないから学校には行かないという選択をすることや、人生の一時期に充電期間としてあえてひきこもりの時期があったとしても、そこにお子さんが意味と価値を本気で見出し将来の飛躍を目指すというのであれば、親御さんとしては心配にはなるでしょうが、お子さんが自ら選んだ生き方なのであれば、不登校やひきこもりという事象だけを捉えて十把一絡げで「すべてが悪」と否定されるものではない、とさえ思っています。
問題は、それが熟慮の上での自らの前向きな決断に基づくものではなく、本人もそうした状況に決して満足しているわけではなく、そんな葛藤すら麻痺してすべてを先送りにして過ごし、無為な時間ばかりが流れ、年ばかりとっていき、貴重な人生における機会損失が重なり続けてしまっている……そんな不健康な心のありようにこそあるのではないでしょうか?(つづく)
▽最上悠(もがみ・ゆう)精神科医、医学博士。うつ、不安、依存症などに多くの臨床経験を持つ。英国NHS家族療法の日本初の公認指導者資格取得者で、PTSDから高血圧にまで実証される「感情日記」提唱者として知られる。著書に「8050親の『傾聴』が子供を救う」(マキノ出版)「日記を書くと血圧が下がる 体と心が健康になる『感情日記』のつけ方」(CCCメディアハウス)などがある。