(2)病院の「胃瘻を始める」はウソだった可能性
取材を進めると、<A病院に大学病院側から母親の状態を聞く照会が入り、A病院は無理して胃瘻に持ち込もうとした魂胆がバレたと思い、胃瘻を中止した。母親の食欲をなくしていた何らかの薬剤の投与を中止した>可能性があることが判明した。
事実が証明されれば、犯罪として立件する選択肢もあったが、広瀬さんは母親の容体が回復したことが一番と思い、病院側を問い詰めることはしなかった。
A病院はなぜ、その必要のない患者に胃瘻をしようとしたのか。理由には、長期にわたって胃瘻を継続して安定した収入を確保する思惑があったことが考えられる。
一部のケースと信じたいが、医師によっては診察で患者や家族がどのような社会的地位の人か、どのくらい医療知識を持ち合わせているのか、また、どのような性格の人なのかを値踏みするケースがあることを取材を通じて聞くことがある。
広瀬さんの母親は命をもてあそばれるところだった。そうならないために、患者は医療の市民講座やテレビ番組、インターネットで医療情報を検索するなどして、適切な医療情報を収集したいものだ。=つづく
(医療ジャーナリスト・大家俊夫)