イメージが先行…「胃ろう」は決して“悪者”ではない
クスリの投与方法のひとつ「簡易懸濁法」についてお話しする前に、どうしてもお伝えしなければならないことがあります。「胃ろう」についてです。みなさんは、「胃ろう」と聞くとどのようなイメージを持たれるでしょうか? なんとなく悪いイメージがあり、「自分だったらやりたくない」という方もいらっしゃるでしょう。今回は、胃ろうについて私が思うところも含めてお話しします。
胃ろうとは腹部と胃をひっつけてそこに穴(瘻孔=ろうこう=といいます)を開け、チューブを通したものをいいます。超高齢者などで物をのみ込む力が低下した状態のことを嚥下(えんげ)障害といいますが、それによって食べ物が気管に入ってしまう、いわゆる誤嚥をしてしまうような場合に、胃ろうは選択されます。チューブを介して栄養を直接胃に入れることになるので、胃ろうでは液体の栄養剤が必要です。
私の感覚ですが、どちらかというと胃ろうは忌み嫌われていると思います。その要因のひとつは、一時期「胃ろうは悪者だ」という論調が一部のメディアにあったことが挙げられます。そうでなくても、「お腹に穴を開けるなんて」とか「口から食べられないなんて」といった考えをお持ちの方もいらっしゃるでしょう。私はここに少し誤解があると考えています。まず、確かにお腹に穴は開きますが、これは「口がお腹に移動してきた」という認識のほうが正しいです。それにより、食べ物が誤って気管に入るリスクを回避できます。