(18)ただ話を聞いてくれる人がいるということが大きな支えになった
一方で、私の話を受け止め、静かに聞いてくれた友人たちもいた。しばらくは毎日、電話をかけてくれた人もいたくらいだ。それがどれほどありがたかったことか。きょうだいも夫も子もいない私に、ただ話を聞いてくれる人がいるということが、とても大きな支えになったのだ。
誰にでも訪れる可能性のある親の介護だが、始まるまでは実感するのがとても難しい。介護はある日突然始まり、戸惑ってしまう人も多い。パニックになってしまうこともある。そんな時に、誰を、何を頼りにすることができるだろうか。
私のたどり着いた答えは、できるだけ正しい情報と、経験者の友人だ。今、渦中に放り込まれつつある友人たちから、「実は……」と相談されることが増えてきた。せめてできることとして、話を聞いたり、体験を話したりしている。それが、何もわからずストレスに押しつぶされそうになっていた時の自分へのなぐさめにもなっている。(つづく)
▽如月サラ エッセイスト。東京で猫5匹と暮らす。認知症の熊本の母親を遠距離介護中。著書に父親の孤独死の顛末をつづった「父がひとりで死んでいた」。