(3)娘の1日4回の投薬指示に父は「もういいよ!」と逆ギレ
昨年の秋、自宅近所の眼科専門クリニックで「白内障」の手術を受けた富岡孝一さん(仮名/東京・練馬区在=77歳)は、翌日、病院を再訪した。
手術をした左目の眼帯が外され、看護師から術後に挿入する点眼薬の使い方が説明された。
孝一さんは2年前に「認知症1」の診断を受けており、看護師の説明についていけない。聞き役はもっぱら付き添った娘の裕子さんだった。
「点眼薬は3種類、1週間分を渡します。抗菌点眼薬は1日4回、抗炎症点眼薬も1日4回、ばい菌を殺すための感染予防点眼薬は1日2回、忘れることなくさしてください」
こう説明され、大量の点眼薬、「クラビット」「リンデロン」「ブロナック」が手渡しされた。
父ひとりではとても無理な処方である。術前に院長から言われた「白内障の手術は、認知症にかかる前に行ってほしかった」との言葉が裕子さんの頭の中に蘇る。
裕子さんは父親を自宅に送る途中で、畳大の大きな模造紙を1枚購入した。1カ月間のカレンダーを作るためだった。