(2)手術は大成功…しかしそれから父と娘のバトルが始まった
年金生活者の富岡孝一さん(仮名/東京・練馬区在住=77歳)は、昨年の秋、自宅近くの眼科クリニックで「白内障」の日帰り手術を受けた。長く独居生活を続ける孝一さんには、ひとつ大きな問題があった。2年前から発症している認知症だ。
同じ都内に住み、クリニックに付き添った長女の裕子さんは、院長から「術後、目が改善するまで責任を持って認知症の父親を介護することが手術の条件」と言われた。裕子さんは、手術前に行われた屈折検査、角膜曲率検査、眼圧検査や、手術当日の眼軸長測定(眼球の前後の長さ)、角膜内皮細胞検査(角膜の裏側にある角膜皮細胞の数と形の検査)、瞳孔径計測(瞳孔の大きさを測定)にも付き添った。
その後、麻酔薬が点眼され、手術着に着替えた父を手術室まで見送った。裕子さんが付き添えるのはここまでで、手術室前の廊下に用意された丸椅子に座り、父の帰りを待った。
待ち時間は随分と長かったような気がしたものの、実際は20分程度である。やがて、左目に大きな眼帯を装着して、孝一さんが手術室から出てきた。