就寝中に大地震…防災プロが枕元に用意「ラジオ、スマホ、懐中電灯」…もうひとつは?
“最初の一撃”から身を守る寝室の安全性
こう言うのは、防災アドバイザーで森総研代表の森健氏だ。森氏は、静岡県庁防災局(現・危機管理部)などに12年間勤めたほか、住友電装で新型インフルエンザのパンデミック対策を指揮。官民双方の現場を知る防災のプロだ。その森氏に、自宅で夜間に地震が起きた場合の備えについて聞いた。
「夜間の地震対策で最も重要なのは、寝室の安全性確保です。具体的にドスンときた最初の大揺れで致命傷を受けることがないようにすること。これが一番です」
日中の活動中は、地震の揺れで周りの物が倒れてきても対応できるが、就寝中はできるはずがない。そのための安全対策だ。
「寝室にタンスや棚など背の高い家具を置いてはいけません。間取りの都合でどうしても置かざるを得ないときは、転倒対策をしておくこと。賃貸マンションなど壁に穴をあけて固定することが難しければ、せめて突っ張り棒やストッパーで固定すること。その場合、家具の前側の床との間に転倒防止のくさびなどを敷いて家具に傾斜をつけ、壁側にわずかに重心がかかるようにしておくのがベターです」
突っ張り棒やストッパー、くさびのほか、転倒防止マットなどは、ホームセンターやネット通販で簡単に入手できる。すぐに用意したい。
要注意は背の低い家具で、たとえば腰程度の高さの本棚でも油断禁物。床に布団を敷いて寝ていると、その程度の高さでも倒れ方や体に当たる部位によっては大きなダメージになりかねない。背の低い家具も、転倒防止の対策が必須だ。
■家具は扉の近くに置かない
間取りに余裕があって寝室以外の部屋に家具を移動できるならそれが一番だが、寝室の中を含めて家具の置き場所はよく考えること。
「本棚をはじめ趣味の物を飾るような棚は寝室の外の廊下に配置することは珍しくありません。その配置も、状況によってはよくないのです」
廊下の家具なら、寝ている人が転倒による直撃を受けることはない。なぜか。
「万が一、棚が倒れたときに寝室の扉を塞ぐようなことになると、寝室から出られなくなります。同じ理由で、寝室の中で扉を塞ぐような倒れ方になる恐れがある場所への家具の配置は、たとえベッドや布団への直撃を免れてもNGなのです」
なるほど、家具の転倒を防ぐのは、自分や家族の身を守ることのほか、避難経路を確保することに意味があるのだ。避難経路の確保という視点は盲点かもしれない。覚えておこう。
「平屋ではない一戸建ての場合、寝室は1階ではなく、2階以上が無難。万が一、自宅が倒壊した場合の圧死を予防するためです」