睡眠の準備は朝から始まる! ハーバード大医師が説く「戦略的休息」のススメ
新年度が始まって約2カ月、新しい仕事や部署での生活にも慣れてくる一方、気負ってスタートしたことによる疲れが出てくる時期かもしれない。しかし、この先、まとまった連休は、夏休みまでなく、疲れは残さずにその都度、しっかりと休むことが重要だ。実は、だれもが必ず行っている「休息」には、戦略が重要なことが分かってきた。
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年を重ねると、十分に睡眠を取ったつもりでも朝起きると何となくだるく疲れが取れていないことはよくある。睡眠不足や疲れを解消しようと、週末は昼まで寝て体力回復に努めたら、月曜からは再び睡眠不足に……。
アラフィフ記者にとっても耳が痛い話だ。疲れをため込んで休日を迎えることはしばしばで、休んでも体力が回復しないのは年のせいか、それとも体力が落ちたのか。いずれにせよ加齢に原因を求めるが、そうではないという。
「休息というと、ソファでのんびりしたり、ベッドで休んだりすることをイメージする人がほとんどだと思います。確かにアスリートや体を使って仕事をする人は、それが休息かもしれませんが、デスクワークの人にとっては適度に体を動かすことで理想的な休息が得られるのです。つまり、日常生活を静と動で分けると、どちらか一方はよくなく、休息とはそれぞれのバランスを取った上で体を休めること。そのためには、毎日の生活で休息に向けた戦略が欠かせないのです。アスリートや肉体労働の人も、休日に寝ているより散歩などで体を動かす方が血流が促され疲労物質が取り除かれやすい」
こう言うのは、米ハーバード大と仏ソルボンヌ大の両医学部で客員教授の根来秀行氏だ。医師として内科学や抗加齢医学、睡眠医学などを幅広く研究。その成果から、グローバル化やIT化の進展で24時間常に仕事や生活が可能な現代人には、戦略的な休息が不可欠だと説く。その根底にあるのが、体に備わる制御機能だという。
「究極の休息は、睡眠です。しかし、良質な睡眠を得るには、時計遺伝子によるサーカディアンリズムと、交感神経と副交感神経からなる自律神経のバランスをそれぞれ整えることが大切。この2つは人体にとって重要な仕組みで、毎日の生活の中に2つをうまく機能させるように適切なタイミングで適切なスイッチを押すことが戦略的な休息です。そうすると、正しいタイミングで疲弊した細胞に酸素と栄養素が供給され、ひいては良質な睡眠が得られるため、しっかりと体を休めることができる。そんな生活を毎日続けると、当然、パフォーマンスが上がります」