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小沢コージ自動車ジャーナリスト

雑誌、web、ラジオ、テレビなどで活躍中の自動車ジャーナリスト。『NAVI』編集部で鍛え、『SPA!』で育ち、現在『ベストカー』『webCG』『日経電子版』『週刊プレイボーイ』『CAR SENSOR EDGE』『MONOMAX』『carview』など連載多数。TBSラジオ『週刊自動車批評 小沢コージのカーグルメ』パーソナリティー。著書に『クルマ界のすごい12人』(新潮新書)、『車の運転が怖い人のためのドライブ上達読本』(宝島社)、『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた 27人のトビウオジャパン』(集英社)など。愛車はBMWミニとホンダN-BOXと、一時ロールスロイス。趣味はサッカーとスキーとテニス。横浜市出身。

韓国650馬力EVは衝撃だ! ヒョンデ アイオニック5Nのコンテンツ力にビックリ

公開日: 更新日:

ヒョンデ アイオニック5N

 これはゲームか映画か? まさかスポーツカーにこんなデジタル演出が持ち込まれる日が来るなんて! それは6月5日から日本でも販売開始する驚愕の650馬力EV、ヒョンデ アイオニック5Nだ。

 ベースは一昨年日本に再上陸した韓国ヒョンデ初のバッテリーEV専用車、アイオニック5。ただし、E-GMPなるEV専用プラットフォームやデジタルデザインはそのままに、モーターパワーやボディ剛性、デジタル演出をやり直し、別物たる電動スポーツモデルに仕上がっている。

 車名的には末尾に“N”が付くだけだが、ある意味BMWでいうMモデル、メルセデスでいうAMGに匹敵し、そのままガチなレースに出てもおかしくない実力。事実、アイオニック5Nはドイツのニュルブルクリンク北コースで7分台を記録する力を持ち、これは最新ホンダ シビック タイプRにほぼ匹敵。それを大容量バッテリーや高出力モーター、特別冷却システムなしに実現できるわけはなく、当初価格はベースのほぼ倍、1000万円クラスにはなると予想されていた。

 それがフタを空けてみると900万円前後。結構なバーゲンプライスだ。

 まずベース車のアイオニック5と違うのはボディサイズで、専用バンパーやエアロが付いて全長4715×全幅1940×全高1625mm。80mm長く50mm広く20mm低い。ボディ剛性も強化され、重心も低められている。

 ブレーキも当然専用の前後回生ブレーキとメカブレーキが組み合わされ強力無比。タイヤも275/35ZR21サイズの5N専用ピレリPゼロを履く。

デジタル演出も韓国エンタメ並みに刺激的

 一番違うのはモーターパワーとバッテリー容量で、フロント237ps&リア413psの強力前後モーターと84kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載。通常時は609ps、ブースト時は650psの驚愕パワーを発揮する。バッテリーEVなので車重は2.2トン台と重いが、330psのシビック タイプRの倍近い出力を発揮し、同等の速さを実現。時速0-100km加速は驚きの3.4秒だ。

 ただし5Nの凄さは、速さやリアルなステアリングフィール、屈強な剛性感だけじゃない。ある意味、韓国エンタメを思い起こさせるデジタル演出も刺激的なのだ。

 まずはサウンド。フルEVだけに普段エンジン音は皆無で♪ウィーンというモーター音やインバーター音が聞こえるくらいだが、一度「N Active Sound+」を入れるとたちまちレーシングカーさながらのエンジン音。この生々しさは実際に聞いてもらうしかないが、ヘタなレーシングカー以上にエキサイティングだ。

 しかも音色は3種選べて、1つはエンジン音の「イグニッション」、1つはヒョンデハイパフォーマンスEVの音を再現した「エボリューション」、もう一つはジェット機サウンドを奏でる「スーパーソニック」。それも実際のエンジン音やモーターサウンドを録音して再現するだけでなく、音の要素を抽出し、増幅しているそうで、これぞ、ザ・コリアンエンタテイメントだ。

前代未聞の「ドリフトアシスト機能」も搭載

 他にも、本当は1速しかないEVなのに8速DCT車のようなシフト音や、シフトショックを再現する「N e-Shift」や、サーキット走行でアクセル1つで加減速できる「Nペダル」を搭載。

 中でも一番唸らされたのは「N ドリフトオプティマイザー(最適化)」で、てっきり自動ドリフト走行ができるのか? と思いきや、その一歩手前。トルク変動の大きいモーターEVだけに、リアタイヤを滑らせるドリフト走行が難しく、それを補助するモードなのだ。横Gがかかったらモータートルクを抑えたり、普段はリア駆動で走り、タイヤが滑り過ぎたらフロント駆動も入れるなど、まさに前代未聞の「ドリフトアシスト機能」。

 衝撃的に速いだけじゃない。コントロール性が高く、面白くて気分が盛り上がるハイパフォーマンスEV=アイオニック5Nなのだ。

 EVなんて静かで速いだけで味気ない! などと思ってる昭和のガソリン臭いスポーツカー好きに一度は乗って欲しい1台だ。

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