アジア選手権完全制覇目前で長嶋監督が初めて笑顔を見せた
プロ野球選手は長丁場のペナントレースに慣れているので、1試合の熱量、出力を100%に持っていくのが難しい。パにプレーオフが導入されたのは翌2004年から。当時はリーグ優勝が決まれば、後は消化試合です。ロッテは日本シリーズから長く遠ざかっていたこともあり、「集中して勝ちに行くことは、こんなにも難しいのか」と痛感したものです。
最後の韓国戦も似たような雰囲気でしたが、こちらは2―0とロースコア。台湾戦よりも緊張し、ひとつのミスも許されない、という空気が漂っていました。先発の和田から黒田、岩瀬とつなぎ、最後が僕。八回2死からマウンドに上がって三振を奪うと、九回も三振、右飛、三振と3者凡退で抑えました。
この瞬間、僕が抱いたのは喜びより何より、「日本のプロ野球がアジアでは最高峰」だと確認できたことの安堵でした。普段、試合中はあまり感情を表に出さない小笠原さんがヒット1本でガッツポーズを見せていたと言えば、僕らが味わった苦しさがどれほどのものだったか、想像できるかもしれません。
そして長嶋監督に恥をかかせることなく終われた、という達成感もありました。長嶋監督は雰囲気づくりがうまく、おそらく内心ではピリピリしていたのでしょうけど、僕らには極力それが伝わらないように振る舞っていました。