身内のマスコミに批判されても…落合監督は選手を大人扱い
「目線を上げて低めのボール球は絶対に振るな。そのためなら見逃し三振をしてもいい」
落合博満監督は打者にこう指示した。今でこそ、これは球界に定着しているが、2005、06年当時は画期的なことだった。12年に巨人も一時的に取り入れたが、原辰徳監督が見逃し三振を良しとせず、結局は定着しなかった。
その原監督や野村克也監督も「ファンあってのプロ野球」と口にする。落合監督は正反対だ。「勝つことがファンのため」と言ってはばからない。秘密主義で故障者などの機密情報は一切公表しない。コーチである私でさえ、選手の情報が分からないことがあった。
作戦はとにかく堅い。無死一塁なら、クリーンアップ以外はほぼバント。次の打者の方が打ちそうなら、たとえ1死からでも「送れ」のサインが出ることもあった。原監督は時に「えっ?」と驚くようなサインを出す。野村監督もそうだ。しかし、落合監督は意表を突くようなことはしない。リスクは冒さず、確実に得点圏へ走者を進める。そこから適時打を待つという安全策を多用した。